所有物

自分自身の自尊心を半径にして、
コンパスで書いた円。
肉体、精神、声。
内側にあるのは、自分の確かな所有物。
外側に行くほど、友人、恋人。
変わりやすい感情の交じった、不確かな所有物。
しかし、僕ら人類の自尊心は自分で思ってるよりも遙か大きく、
世界は意外にも狭い。
円の中心同士が交わることはないが、
円の外側では、容易く交わる。
二つ三つでなく、沢山交わる場合もある。
そして円の外側にあるのは、不確かなもの。
当然、自尊心の大きな僕らは、
自分は人に必要とされてると思い、
不確かなのに、確かな所有物と勘違いする。
例えば、一人の女がいたとして、
その人が魅力的なら、当然、彼女を好きになる人々がいる。
何度も述べるが、自尊心はやっかいなもんで、
自分が好きな人が、実は自分を好きなのかもしれない、
という考えを芽生えさせる。
勿論、彼女の円も沢山の人と重なっていて、
その中で、一番彼女の円の中心に近い人が、
彼女の好きな人である。
彼女と好きな人が結ばれた時、
他の彼女に重なっていた人々は、
自分の手に入る筈のものを取られたように感じる。
自分でも頑張れば手に入ったと、悲しみを最小限に抑え込む。
自尊心には気をつけた方がいい。